坂上弘(84)が唄う尾崎豊(19)「卒業」



行儀よくまじめなんて クソくらえと思った
夜の校舎 窓ガラス壊してまわった
逆らい続け あがき続けた
早く自由になりたかった
信じられぬ大人との争いの中で
許しあい いったい何 解りあえただろう
うんざりしながら それでも過ごした
ひとつだけ 解かっていたこと
この支配からの 卒業

卒業して いったい何解かると言うのか
思い出のほかに 何が残るというのか
人は誰も縛られた かよわき子羊ならば
先生あなたは かよわき大人の代弁者なのか
俺達の怒り どこへ向かうべきなのか
これからは 何が俺を縛りつけるだろう
あと何度自分自身 卒業すれば
本当の自分に たどりつけるだろう

仕組まれた自由に 誰も気づかずに
あがいた日々も 終わる
この支配からの 卒業
闘いからの 卒業

 


八十四歳。大正十年生まれが「卒業」した学校は、旧制学校だ。
高橋和巳埴谷雄高ISBN:4061983210 が書きたがるような旧制エリート学校からの「卒業」? いや、誰もがあんな陰鬱な思弁に明け暮れていた訳がない。「大学は出たけれど」という無職者予備軍という側面もあったのだ。
「ダメダメな旧制高校生の抗い」といったら、「歌のわかれ」ISBN:4061962655中野重治だろう。落第に怯えながら、無試験で大学進学の方法はないかと画策したり、版画を彫ってみたり、議論を避けて押し黙り、向かっ腹を立てたり・・・。大して勉強もしない長髪着流しの文学青年たち。彼らを憧れの眼差しで見ていた下級生が、21世紀まで生き延びて、朦朧として混濁した記憶の中で唄う「卒業」。
七十年に及ぶその後の生活の中で、戦後の学校紛争と八十年代の校内暴力とが記憶の中に紛れ込み・・・・なおも「ひとつだけわかったこと」だけが執拗に記憶に染み付いて離れない。「この世界からの、卒業」。 死?



生存能力の果てに来る「この世からの卒業」=「死」。
しかし、その直前まで、「抗い」と「闘い」が継続されたことも証言されている。


都筑響一による坂上弘インタビュー
交通地獄そして卒業