まだ若いロットンがマイクを抱え込んでビール瓶やイスが

この映像、見たい。

ピストルズで僕がいちばん印象に残っているのは、90年代後半にイギリスのBBCがつくったロックの歴史についてのシリーズ番組、その「パンク・ロック」の回に出てくる映像で、解散直前ぐらいの70年代終わりのコンサートの光景です。アメリカのディープ・サウス、深南部のプア・ホワイト地帯にツアーをするシーンですね。

凄まじい映像で、ピストルズについての伝説って色々あるけれどこれは出色でしょう。コンサート中に銃弾やナイフが飛んでくる。しかも罵声が、例えばロンドンとかニューヨークでやるのとは違う種類の罵詈雑言が飛んでくる。「お前らほんとうにぶっ殺してやる」、「お前ら屑だ」「ゴミだ」みたいなことを、銃を手にした男たちが何らのギミックもなしにいう。つまりパンクスの間の共通の了解というか、ここまではやってもいい、そういう内輪の黙契が何もない。ほんとうに殺してしまえ、というような雰囲気です。そういう罵声と飛び交う物をよけながら、一触即発の中でライブを演るんです。むさ苦しい中年男の客にインタヴューしてるんですけど、もう恐ろしい状態でコンサートというより襲撃に来た感じ。

要するに公民権運動の時代にたくさんの黒人たちを殺してきた、プアホワイトの有色人種差別やショービニズムが露骨に出ているんです。ニグロにかぶれたヒッピーは殺す  と。パンクとヒッピーの区別なんか彼らには関係ない。もうめちゃくちゃになっちゃうんですが、ジョニー・ロットンも「そうなるだろうな」と、これは半ば意識して南部に行ってるんです。

マルコム・マクラレンを通せばニューヨーク辺りに呼んでくれる人たちはいくらでもいる。ニューヨークとかサンフランシスコに行けば歓迎してくれるのはわかっている、でもそういう所は行かない。わざと回避して、いちばんやばい、いちばん歓迎されないところを選んでツアーするんです。それでピストルズは実質上、完全に崩壊してしまう。その映像が非常に印象に残っているんですね。実にピストルズらしいクラッシュの仕方で。まだ若いロットンが、マイクを抱え込んでビール瓶やイスが飛んでくるステージ中央にヤンキー座りして、荒れ狂うオーディエンスを見てる。それがなんとも虚ろな目なんだよね。それが僕にとってのピストルズのもっとも偉大な瞬間というか、至高の瞬間。もっともピストルズらしい瞬間だったと思うんです。

(平井玄「空虚(スカ)に踏みとどまる  パンクの停止した弁証法」より)

(阪根タイガース日記より転載)


前田一くんに教えてもらった。ありがとう。
Dancing in the street - a history of Rock and Roll (1995)- BBC documentary」の57:00あたりからSex Pistolsのアメリカ南部ツアーの様子が出て来る。
ジョニー・ロットンハンバーガーぶつけられてる。スティーヴ・ジョーンズが飛び交うハンバーガーや缶ビールを避けながら演奏してる。シド・ヴィシャスがベースで客に殴りかかってる。ロットンがうつろな目をしてしゃがみ込んでるのは、サンフランシスコのライブか?
飛び交っているのは、銃弾やナイフではなく、ハンバーガーや缶ビールのようだ。殺伐とした印象は皆無だった。思い出したのは、「ブルース・ブラザース」に出て来た、カントリーのライブハウスでのシーン。ああいうことなんじゃないのか? 「へんな唄、唄うな! へたくそのガキ!」って怒ってるんだろう。中西部特有の”ノリ”で、アメリカ国内ではギャグになるほどの周知の事実ってことでもあるんだろう。しかし、特に「アメリカ南部」(アメリカ中西部?)ってことではなく、世間的には真っ当な評価だろう。「上手い演奏、綺麗な唄」が聴きたいっていう真っ当な「美」の評価の前に、バンドが耐えられなくなって崩壊したっていうのは、その通りだろう。


Rawhide Blues Brothers

「ローハイド」唄っても、ビール瓶は飛んで来てる。