「単純な雨のように」

2007年夏、4×5で高円寺をスナップして歩いた。
三脚やらアオリやら布被るのやら暑苦しいので、フラッシュ一灯の手持ち撮影にした。ウィジーの装備だ。装備だけウィジーに似せてもつまらいので、服も40年代のコスプレにした。白のパナマ帽に、麻のスーツで、ネクタイ締めて、茶の革靴。街は、ゲロまみれのゴミだらけで、そこら中で酔漢が酔いつぶれて倒れていた。片っ端からバシャバシャ撮った。バシャバシャ撮ってたら、午前5時頃、始発まで呑んでいた連中がぞろぞろ出て来た。店から出て来て、祭の余韻そのままに僕に声をかけて来た。
「おじさん、何撮ってるの? プロの人? 写真、撮ってよ!」
今まで街で写真を撮って、「撮るなよ!」と言われたことはあっても、「撮ってよ!」と言われたことはなかった。写真を撮って、ポラはあげた。
そんな連中が二組、三組…。調子に乗って街中でちんちん出した奴までいた。「バカだねぇ…」と思いつつ楽しかった。