猿人類の写真展


「単純な雨のように」

2007年夏、4×5でスナップして歩いた。
三脚やらアオリやら布被るのやら暑苦しいので、フラッシュ一灯の手持ち撮影にした。ウィジーの装備だ。
装備だけウィジーに似せてもつまらいので、服も40年代のコスプレにした。白のパナマ帽に、麻のスーツで、ネクタイ締めて、茶の革靴。
場所は高円寺。阿波踊り翌朝未明。
街は、ゲロまみれのゴミだらけで、そこら中で酔漢が酔いつぶれて倒れていた。
片っ端からバシャバシャ撮った。
バシャバシャ撮ってたら、午前5時頃、始発まで呑んでいた連中がぞろぞろ出て来た。店から出て来て、祭の余韻そのままに僕に声をかけて来た。
「おじさん、何撮ってるの? プロの人? 写真、撮ってよ!」
今まで街で写真を撮っていて、「撮るなよ!」と言われたことはあっても、「撮ってよ!」と言われたことはなかった。
嬉しかったので、写真を撮って、ポラはあげた。「ありがとう!」と言われた。写真撮って、お礼を言われたのもはじめてだったかもしれない。
そんな連中が二組、三組…。調子に乗って街中でちんちん出した奴までいた。「バカだねぇ…」と思いつつ楽しかった。

そんな唯物論的な偶然の産物が、これらの写真だ。まさに「単純な雨のように」(アルチュセール)成立した写真たち。まっすぐ降っていた雨粒がまっすぐ降り落ちていた雨粒と偶然にぶつかっておこった唯物論的偶然による写真たち。
たまにこんな事がおこれば、通り魔にならずに生き続けられるのかもしれない。

7月15日から横浜のあざみ野とかいうところである展覧会に参加します。あざみ野ってどこだかいまひとつよくわかんないけど田園都市線の奥の方らしいです。詳しい場所やら会期やら参加者やらは判明し次第。まだ誰が参加するか最終的に決まってないようなので。「ようなので」じゃなくて、決まってないです、開催までひと月切ってるのに…。展覧会のメインは吉野英理香。なんせメインが「猿人全開」の吉野英理香。そのせいかどうか知らないけど、期せずして全体的に「頭の悪い展覧会」になりそうな気配。しかし、「猿人類による写真展」に参加することがあろうとは思いも寄らなかった。まあ、最近の写真関係は、ヒトよりはサルに近い、猿人類レベルのものばかりで、 「美術界」は、近代文明の壊滅した「猿の惑星」だからサルの方が力を持ってるのが現状だが。しかし、最後の人類として、なんかの巻き返しは謀りたいものだと常々思っていながら、なんとあからさまにサルっぽい展覧会に思いっきりサルな作品でもって参加することになりそうってのはあれです。現時点ではサルの支配下にあるんだってことを否応無く意識しちゃったのかもしれない。ともあれ、鋭意準備中であります、あたふたばたばたと。