山本直樹「レッド」




mixi 日記2007年10月27日06:03 より)

山本直樹「レッド」ISBN:4063723224


これは完結したところから読みたかったかもしれない。はじめから結末を構想しての構成の訳だし。(だからこそ、現時点での死者には番号がふられ、死亡までの日数が章毎にカウントダウンされていく。逮捕者についても同じく)
「そもそも若年層の叛逆がしぼみはじめた時期にはじまった運動であった」「少人数であった」「資金源もなかった」に加え、「彼ら/彼女らはみな20代であった」という点の強調が面白い。
95年「オウム事件」等を踏まえて翻って考え直され、まだはっきり出て来てはいないがおそらくは、「いじめ」「いじめからのリンチ殺人」という最近の問題をちらつかせながらの構想なのだろうと思う。
「若年層の閉塞した人間関係の中でおきていった、『いじめ』の側面をつよく持つリンチ殺人」。まだ、「71年2月」の時点までしか揃っていないが、山本直樹の本領が発揮され始めであろう「山岳ベース事件」の描写への期待が膨らむ。詰問で心理的に追い込んでおいて、暴行、緊縛、致死! 森山塔(あるいは塔山森)名義のエロ漫画に於いても頻出する、まさに彼の十八番!

やはり、連載終了時からもういちど振り返って再編し直して、完結しところから読みたかったというのが本音だ。はじめっから、終わりから構想されている話なんだし。

われわれの世代は、常にこの時代を「年上の人々の行動」として聞かされ続けて育った。(いまだに喧嘩の時に「安保で闘ったんだ!」と口走る酔っ払いのじいさんすらいる!) しかし、その実、40代になってから振り返るなら、「学生サークル内のリンチ事件」っていう規模の事件だったんだろう。

山本直樹は、新宗教関連のトラブルに想をとった作品は多い。新宗教の閉塞した人間関係やら思考やらの中でおこる事件。最近の長野のリンチ殺人事件なんて、山本作品のパクリに映ってしまう。そのような時代を経て、オウム事件のような大きな社会的な事件に帰結したような結末を経て、さらにそこから十年も経て、改めて「政治」が新宗教なみに近しく感じられた時代の話を描くってことだと思っている。
新宗教の"勧誘"なみに、"オルグ"が日常的に行われていた時代。こんなに長々じらす山本直樹っていうのもはじめてだし。この「じらし方」あたりに山本直樹によるあの時代の理解が滲んでいるような気がする。

学生時代に古本屋で700円で買って以来、読むのが面倒で放ってあった「赤軍ドキュメント」 ISBN:4787786180 をようやく開く気になった。なんせ、新左翼ジャーゴンで出来上がった文体は、ほんとに読むのが面倒だから。購入後20年を経て読むと大変貧しい語彙で持って書かれていることがようやく判る。なんでこんなに迂回した語法を使うのかもよくわからない。
「貧しい語彙」と「よくわからない迂回」。このふたつの条件の中で、若造たちがいじめやリンチに落ち込んでいったのだろうということは、なんとなく想像がつき始めた。

元教師根性で付け加えるならが、誰かが「貧しい語彙の強要」と「にもかかわらず迂回のある語法」を駆使し始めたら要注意だ、ということだろう。なにかウソがある。よそに新しい語彙を求め、性急な反駁を試みること。これで大概の危険は回避できる筈だ。
もっとも「危険の回避」がいいことなのかどうかについては、いまだによくわからないが。危険を承知で自爆してみる方が、実りの多い人生であるような気もする。30代以後なんて大してなにも起こらないんだから。
その辺りは、本人次第なんだろう。「のりやすいたち」か、そうではないか。本人が決めるより先に決まっていってしまうものなのだろうと思っている。「のりやすいたち」の人たちのことを羨ましいとも思わないが、「のらないたち」である自分が大して上手く行っているような気もしない。







と、書いてアップしたら、元赤軍派議長:塩見孝也さんから、マイミクの申し出があった。承認した。
面白いよねえ、mixi
雑多を極めるマイミクに「元赤軍派議長」が加わったのは、なんだか嬉しいです。

塩見孝也さん→http://mixi.jp/show_friend.pl?id=3894679