労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の分科会委員、奥谷禮子氏(人材派遣会社社長)の週刊誌インタビュー(・・・)
奥谷氏は、一定条件を満たした会社員を労働時間規制から外す「ホワイトカラー・エグゼンプション」(WE)の積極推進論者。
「経営者は、過労死するまで働けなんていいません。過労死を含めて、これは自己管理だと私は思います」
「祝日もいっさいなくすべきだ」
「労働基準監督署も不要」
「労働者を甘やかしすぎ」などと発言。
http://d.hatena.ne.jp/temjinus/20070208 より
すごいことになってるよなあ。ヤンキー先生ぐらいで驚いてちゃいけない。冗談としては面白いが、これが現実だとなると笑えない。
あのさ、行政の諮問機関の人選ってどうなってんの? 頼むから、根拠ない主張を信念で押し切ろうとする輩をメンバーに入れないでくれ。国政は、TVのバラエティショーじゃないんだから。
「過労死は甘え」だそうです。
インタビュー本体は、見つからない。
しかし、同じ「信念」に基づいた根拠のない発言は、労働政策審議会労働条件分科会でもしている。
詳しい発言内容は、
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/txt/s1024-3.txt
(「EU労働法政策雑記帳」http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/post_1a6b.html 経由)
06/10/24 労働政策審議会労働条件分科会 第66回(議事録)
第66回 労働政策審議会労働条件分科会
日時 平成18年10月24日(火)17:00〜
場所 厚生労働省専用第18、19、20会議室
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○長谷川委員 管理監督者のところは、いくつか論点があって、1つだけ言われてもなかなか答えにくいのです。基本的な部分は管理監督者が広がって、会社のうちの半分が管理監督者などに広がってしまったのは直しましょうと。管理監督者というのはこうですという判断基準は書いたほうがいいのではないですかということが1つです。これで少し是正されます。
その次に管理監督者の深夜割増を削除するというのは、どういう理由か。いまあったほうがいいと思うのは、それをやることによって管理監督者の労働時間についても、ある意味では逆に把握できるのだと思います。
もう1つは、基本的には深夜は働かないというのが原則ですから、10時以降働いたら管理監督者であろうが、その人たちについては割増賃金を払うのは当然ではないか、いいのではありませんか。
私が委員に聞きたいのは、夜中の2時、3時に働いているときに、管理監督者と通常の労働者がいるわけですから、なぜ割増賃金を払うことを削除しなければいけないかのほうが、むしろ私はわからないのです。委員はどういう理由ですか。
○奥谷委員 私の言っているのは、ホワイトカラーエグゼンプションに変えて、好きな時間帯で夜も働けばいいわけで、朝から夜中まで働けとは言っていないわけです。ですから、朝9時から夜中の3時、4時まで働くことに対して割増賃金がどうのこうのということをおっしゃっているわけでしょう、そうではなくて、8時間だったら、1時から9時なり10時まで働くのは構わないのです。
そういう意味で自主管理とか、自分の仕事を管理するとか、自分の裁量で決めるということを、なぜ任せないのか。なぜいちいち法律で決めてやっていかなければいけないのかということがわからないのです。
○田島委員 いま委員が言われたことは、41条2項の労働時間の適用除外の人は本来はできるはずなのです。そういう人たちでさえ、遅刻したり、勤怠で制裁を受けたり、査定を受けたり、あるいは適用除外の人たちの8割が会社側に時間管理をされていますというのが実態なのです。いま言っている適用除外でさえ、そうではないでしょうという現実をどう見るかということです。
○奥谷委員 現実の企業では、そこまでの部分はありません。ある程度フレキシブルにやっています。夜中もし働くのであれば午後から出てきていいとか、そういう形で健康管理も含めて。人材が大事なわけです。またそういう会社であれば人が来なくなります。ですから、今度は企業が選ばれてしまうわけですから、そういうことに対しては、いかに、どう労働者が働いてくれるかということに対して、企業はかなり神経質になってきます。私は皆さんがタコ部屋みたいな発想で、そんなに心配することはないと思います。
○長谷川委員 すべて日本の企業が、委員のような会社だったら、本当にみんな幸せだと思います。そういう会社だけではないのです。先日、家族が過労自殺したとか、過労死した人たちが、いろいろな意見を持って来られて、その話を聞いていてわかったのですが、そういう人たちの話は、ほとんど一般の労働者ではなく、どちらかというと中間か、管理監督者だったのです。本人は働いていく。会社もその人にしてほしいと期待するのです。会社もそういう人たちに対して健康管理をしなくなってしまう。そういう人はすごく真面目で責任感が強いから、どんどん働いてしまうのです。
これはそういう人の妻に聞いた話ですが、バタッと死ぬのだそうです。これは過労死の特徴だそうです。日本の中で過労死とか、過労自殺がゼロになったら、この話はもっとお互いにできるのだと思います。しかし、現実に過労死とか、過労自殺があって、労災認定を受けたり、訴訟をやっている人もいるわけです。委員のような会社だったらないと思いますが、日本の企業は北海道から沖縄まであるわけですから、守れなかったり、労働者の健康管理ができない所にもあるわけです。だから、基準法で最低基準を決めましょうということなのです。企業も会社の役員も、もっと労働者や中間管理者の健康を気遣って、「駄目だぞ、このぐらいになったら働いちゃ駄目だ、休みなさい。あなたは今日はもう帰りなさい」というようにしたら、過労死や過労自殺はゼロになると思います。ところが、不幸なことに、我が国は過労死や過労自殺はゼロではなくて、むしろ増えています。だから、労働時間の、特に深夜労働はどうなのかということを不幸なことに議論せざるを得ないというのが現実だと思います。
○奥谷委員 過労死まで行くというのは、やはり本人の自己管理ですよ。
○長谷川委員 でも自己管理だけではなく、会社も仕事をどんどん与えるのです。
○奥谷委員 でも、それをストップするというのも。
○長谷川委員 世の中は委員みたいな人ばかりではないのです。それが違うところなのです。
○奥谷委員 はっきり言って、労働者を甘やかしすぎだと思います。
○長谷川委員 管理者ですよ。管理者たちにそういうのが多いのです。
○奥谷委員 管理者も含めて、働いている一般労働者も含めて、全部他人の責任にするということは、甘やかしすぎですよ。
○長谷川委員 そんなことはないですよ。それは違います。
○奥谷委員 それはまた組合が甘やかしているからです。
○長谷川委員 そんなことはありません。
○小山委員 いまの管理監督者の深夜の割増賃金については、今まで適用されてきたことを今回除外する積極的な理由、合理的な理由の説明は一切ありませんでしたから、是非この点については今後明確に継続していただきたいと思います。
さすがに妙チキリンすぎて国会で問題になったらしいです。
2007年2月7日の衆議院予算委員会で、川内博史議員(民主党)が「あまりの暴論なので提示させてもらった。柳澤伯夫厚生労働大臣の諮問委員に日本国憲法を無視している人がいて、ホワイトカラーエグゼンプションを推進しようとしている。」と詰問し、この発言について同議員が読み上げた。この質問に対し、柳澤厚生労働大臣は「まったく、私どもの立場ではない」と答弁している。
奥谷禮子(おくたに れいこ、1950年4月3日 -)
兵庫県神戸市出身の実業家。
甲南大学法学部卒。現在はザ・アール社長http://www.ther.co.jp/
日本郵政株式会社社外取締役、日本アムウェイ諮問委員、ローソン社外取締役、楽天野球団経営諮問委員会委員、日本エンタープライズ社外取締役、経済同友会理事、甲南大学客員教授、総務省市町村合併推進会議委員、人事院多様な勤務形態に関する研究会委員、厚生労働省労働政策審議会臨時委員(労働条件分科会会員)、独立行政法人国立新美術館運営協議会評議委員、神戸市市長諮問委員会委員、神戸市神戸経済特区研究会委員、財団法人ベンチャーエンタープライズセンター知的融合型企業審査委員、WOWOW放送番組審議会委員、株式会社ワールド・グッドデザイン経営諮問委員会委員、エンジン01文化戦略会議幹事。
過去の公職などは以下。郵政省郵政審議会委員、内閣府未来生活懇談会委員、国土交通省交通政策審議会委員、通産省産業構造審議会委員、通産省航空機宇宙産業審議会委員、内閣府規制改革会議委員、公正取引委員会「21世紀にふさわしい競争政策を考える懇談会」会員。
夫は、東京大学大学院教授の米澤明憲。
wikipediaより。
経歴で目を引くのは、「日本アムウェイ諮問委員」かな?
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黙って働くのは、甘えなんだから、きっちり闘って怠業せよ、という主旨ともとれる。この人の会社の組合は、甘えずきちんと有給休日を闘いとっているのだろうか? もし休んでないなら、甘えだよな。
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「はっきり言って、審議委員を甘やかしすぎだと思います。根拠なしに思い込みだけ言い募るなんていうのは、甘えです。首相もふくめて、大臣もふくめて、甘やかしすぎです。」とでも言っとけば、良いんだと思うが、根拠がなかろうが信念さえあればなんでも良いってのが風潮らしいから困ったもんだ。「もうダメかもニッポン」の思いを新たにしたのだった。
付記:
「評論家・山崎元の「王様の耳はロバの耳!」 「東洋経済」の奥谷禮子氏へのインタビューについて」http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_hajime/e/5ada03eab8511fa3a0baba8407c4b226 に、丁寧な批判があった。