ベーシック・インカムが貧困を拡大する



よく知らないままに書くと碌なことはないんだが、思いついたので。

ベーシック・インカム」について。

ベーシック・インカム」。国民全員に最低保証の基本所得を分配しようという社会モデル。田中康夫から阿久根市市長まで云々してるんだから、話題の未来構想なのだろう。なにが良いかについては、新党日本やらいろいろ書いてるし、まあ、生きてるだけで毎月確実に給付金が貰えるのだから、なんの問題もないだろう。

で、問題点について。
ざっとwebでみたところ、


1)財源は? そんなことしたら他の公共事業がストップするだろ
2)常に給付金が貰えるなら誰が働く? 労働意欲が失せるだろう
あたりか?もっともなご指摘な気もするし、やってみりゃあそうでもない気もする。
僕が思うのは、他のこと。
3)貧富の差が拡大するだろう
このこと。

「働く人がよく働いて怠け者のダメな奴が働くなくなるから、働き者ばかりが儲けて云々」っていうことではない。基本所得が国家から支給されるとなったら、労賃が限りなくゼロに近い金額にまで引き下げられるだろう、ということ。
ウォーラーステインが指摘しているが、

賃金収入が高い比率を占めている世帯――プロレタリア世帯と呼んでおく――に属する労働者は、賃金収入への依存度が低い世帯――半プロレタリア世帯――の賃金労働者に比べて、それ以下ではとうてい働けないと思う賃金の下限がかなり高いところにくる。
ウォーラーステイン「史的システムとしての資本主義」1997)
ベーシックインカムが導入されれば、全世帯は、「半プロレタリア世帯」となる。
雇用者は、「稼いだ分は、余録だろ?」とばかりに、労賃を下げに下げまくるだろう。
しかし、「ベーシック・インカム」では生活できない。月6万か8万かそこいらでは養育やら教育やらできるわけもない。
賃労働せざるを得ない。
賃金は小遣い銭程度だ。
世帯の大半は、貧困を極めるだろう。
それに対して、労賃が極限まで下がれば、雇用者がぼろ儲けをすることになり、貧富の差は拡大する。

「いかに半プロレタリア世帯は労賃を値切られるか?」は、非常勤講師の給与と専任教員の給与を比べてみればわかる。学校以外で収入があることを前提に労賃が設定されている非常勤講師の年間給与は、20万とかだ。まあ、小遣い銭だよね。年末、学校から送られて来る源泉徴収票見ると落ちるもん。「なにやってんのかねえ、おれ・・・」って気になる。

しかし、ゲッツ・W・ヴェルナーが、ウォーラーステインを知らないとも思えないので、なんか補足なりなんなりがあるのかもしれん。
いや、ヴェルナー氏は、EU全般にチェーン店を持つドラッグストアのオーナーだそうだから、確信的に労賃を押し下げようと企んでいるのかもしれないが。
なんにしろ、本を読んでから、もう一度書くべきなんだろう。




新版 史的システムとしての資本主義

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