福島第一原発第一号炉


 わたしが訪れたとき、第一原発の第一号炉が運転停止中だった。八一年四月十日、午前零時三十分ごろ、非常時の際に原子炉を冷却する隔離時復水器につながる蒸気配管の一部がヒビ割れて、放射能をふくんだ冷却水漏れが発見された。この一号炉は七一年に稼働してから平均稼働率三〇パーセントでしかなく、双葉地方原発反対同盟によれば、「被爆者製造炉」ということになる。東電のPRセンターの案内で見学(といっても、構内をクルマで十分ほど走っただけのことだが)したときは、小雨がけぶっていたため、一号炉は濃霧に包まれてほとんどみえなかったが、一日四、五千人の労働者が入構しているとのことだった。四基同時建設の第二原発でも六、七千人の入構者というから、その人海作戦ぶりを知ることができる。
 蒸気配管や原子炉容器壁のヒビ割れ修理や給水ジャスパーのつけ替え作業は、被爆線量のもっともたかいもので、故障の多さは、そのまま被曝のたかさを物語っている。
 七八年度の全国の原発労働者被爆線量のうち、二五・八パーセントはこの第一号炉によって占められ、福島第一原発六号炉までの総計は全国の六一パーセントを占めている。ここは被爆者多発地帯である。
鎌田慧「新版 日本の原発地帯」1996)


福島第一原発一号炉は、昔から壊れ易かったようだ。




日本の原発地帯 (同時代ライブラリー (286))

日本の原発地帯 (同時代ライブラリー (286))