久しぶりに入った吉野家は、お昼時をすぎていたので空いていた。
(中略)
「ナミとタマゴ」
と、言った。
牛丼の『並』と卵が来ると、私は丼の表面に大地にしみ込む慈雨のように、あまねくトキ卵を広げてかけ、その全体としての味のハーモニーを楽しむべきか、それともご飯の真ん中に石油採掘井戸のような穴を掘り、そこに卵を流し込んで、最初は牛丼を食べていたがある層まで食べ進むと突如濃厚な黄金の卵の鉱脈につき当る、発見と感動に満ちたアプローチを選択すべきかで、しばし思い悩んだ。
結局、後者をとった。
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黄金だし10
薄口醤油2
みりん2
白ワイン2
りんごジュース2
砂糖1
塩・味の素・醤油・白胡椒・生姜 各少々
(「吉野家牛丼」作り方 ]より)