ヒューチャ・ズ・ライ・ナウ


お釈迦さまの成仏法でなければぜったい成仏できない。(・・・・)この成仏法によって修行しないかぎり、ぜったい成仏できない。お釈迦さまがおっしゃっているように、永久に苦の世界を輪廻転生する。この地球が、メチャクチャに破壊されて、なにひとつ生物がいなくなって、それでも人間の輪廻はやまないぞ。そうお釈迦さまがおっしゃっている。

桐山靖雄阿含経講義 輪廻する葦―ロム エタン ロゾウ トランスミグラン」より)
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シャカがそう言ったんだって。まあ、シャカはいろんなことを言ってるようだけど。
 いつ頃書かれた本なのか知らないが、だいぶ怪獣映画等の影響が強い。「この地球が、メチャクチャに破壊されて」なんて、円谷プロ的。
ウルトラマン前夜祭 「ウルトラマン誕生」を観ると、円谷英二が「自分は怪獣の専門家だったが、今度は地球を守るヒーローについての映画を作る」というような主旨の発言をしている。地球をメチャクチャにする怪獣の専門家だった円谷は「地球防衛軍」(自衛隊とはなんの関係もないらしい)や「ウルトラマン」の来迎を発想することができたが、桐山にはできなかったというところか。そこで、「逃げましょう、逃げましょう」と「成仏」を呼びかけている。



 みうらじゅんが挑戦的な感じで、「自分にとって仏像は怪獣だ」とか発言していた。怪獣っぽくて格好いいんだ、と。しかし、別に挑戦でも提起でも機転でもなく、当時の新宗教的仏教的には普通に宗教的信条に訴える正統派の解釈だったようだ。仏典と怪獣映画は直結していたんだから。「この地球がメチャクチャにされて」という類いの想像力のもとに。麻原オウムは、はっきり「未来少年コナン」「宇宙戦艦ヤマト」「機動戦士ガンダム」等から影響されていたそうだが(水中都市、恒星反射砲、コスモ・クリーナー等を作ろうとしてたんだって! あのさ、程度の悪い小学生のグループじゃないんだから・・・)、90年代的な想像力は、新宗教からおちゃらけサブカル文化人までを巻き込んで同質の安易さと通俗的選民性を帯びていたようだ。
 その安直な面白エリート主義の横で、「失われた10年」と呼ばれる財政無策と雇用不安と経済失墜が進行していたことを併せて思い起こしてみると・・・・・・興味深い以前に、情けない。泣いちゃう。「あーあ。なんであんなんなっちゃってたのかなあ」と。
 その手の怪獣映画的な安易な想像力(「バカ」とルビを振るべきだろう)に対抗するには・・・・・大して難しくなかったと思うんだけど、できなかったんだろうなあ。


ジョン・カーペンター監督「エスケープフロムLA」ASIN:B000E1KMFI あたりで十分だった筈なんだが。
劇中、無法荒廃のLA市街地で隻眼の悪漢:スネーク・プリスキンが渋く決め科白を吐いていた。
「Future is right Now.」。



「ハルマゲドン? メチャクチャにされた地球? でもその手の未来って今のことなんじゃない? 成仏やら解脱やらで回避できる訳がない。」




註)
ウルトラマン前夜祭」

公開番組「ウルトラマ? ?前夜祭 ウルトラマン誕生」 ダイジェスト
(1966.7.10)
1966年7月9日に杉並公会堂で行われたイベント? ?本来はウルトラQ 第28話「あけてくれ!? ??の放送予定でしたが? ??内容が難解ということで 急遽差し替えになりま した。