義父と嫁


また宮崎監督自身も、今年8月、長男・吾朗氏(映画『ゲド戦記』の監督)に長男が産まれたことを明かした。宮崎監督は「(吾朗氏は)これから子育てでひどい目に遭うんだと思うと、『ざまーみろ』って感じだね」と高笑い。



 「崖の上のポニョ」は、子についてではなく孫の話だ。

「母」のことが話題になってたが、登場しない「祖父」こそ、問題にすべきだろう。いや、孫からみた祖父ではなく、嫁からみた義父、なんにせよ不在の「じじい」が全権を握って離さない時代の孫をめぐるおぞましい物語。


 なにより、父=耕一に、息子=長嶋一茂を配していたではないか。その有名な元プロ野球選手=父・長嶋茂雄の息子としてのみ知られている元プロ野球二流選手に父・耕一の役を割り振ったのが、偶然の訳はない。
 耕一は、不甲斐ない息子であり、あてにすべきではない父親であり、「父」でありえないままに、(祖)父の孫の親の役割を割り振られているだけの男である。この、父でありながらいつまでも息子としてしか扱われない男は、事が起きてる間中、ずっと海を彷徨っているだけで岸辺に近寄ることもままならず、妻からあからさまにおおっぴらに馬鹿者と罵られてそれを当然のこととして受け入れ、当然のように自分の息子の縁談にさえ発言権を持たない。全権は母親が握っていて、すべてを勝手に決めてしまう。父が父として人としての当たり前の振る舞いをするならば、祖父が「父」でいられなくなるからだ。祖父がどこまでも「父」でいるために、父・耕一は「息子」でありつづける必要があり、決断裁断反論反駁は'自重'して貰っている。きっと「空気」でも読んでいるのだろう。祖父が主役だからこそ、祖父の息子は子持ちになろうが、いつまでも「息子」であって、決定権も財産も、祖父が握って離しはしない。「まだまだ息子には負けられませんよ」と、全権を手放さない「祖-父」が「父」を遠くへ追いやり、コケとして扱うお膳立てをし、
 「リサさん、息子はあの通り無能じゃ。何の口出しもさせん。あんたにわしのぜんぶをあげよう。リサさんはいつもキレイでしっかりしておる。婆さんの面倒もよくよく看てくださる。無能な息子よりはあんたの方が頼りがいがある。わしの孫の宗介のことは全部あなたにまかせておる。頼みましたぞ。ふぇふぇふぇふぇふぇ」
と、萎びたちんちんをぴくぴくさせながら、やに下がる。早く死んでしまえ、因業のスケベじじいが。
 嫁=母は、姑小姑から解放され(姑小姑は施設に収容され実権を剥奪され嫁らの管理下に置かれる)、やにさがった義父=祖父の全面庇護があることをあてに、無謀と専横を決め込み、五歳児の息子に嫁をあてがい、囲い込む。崖の上に築かれたオッパイファシズム炸裂する母親の帝国は着々と完成へ近づき、映画本編は唐突に終わる。


 物語の後、崖の上にはポニョを従え早々と姑権をも握ったリサが、すべてを吊り支える全能の消失点たる義父=祖父とともに陣取るのだろうことだけは明らかだ。耕一は、'空気を読み'、'黙って事変に処す'ことだろう、どこまでも「息子」的な所作として。


 「崖の上のポニョ」の続編は、ヒッチコック「サイコ」なのかもしれない。「サイコ」の崖の上には、老いて乾いて祖母とはならなかった母がいた。「サイコ」でも意図的に「父」は不在だった。グズバカ能なしと罵られつづけた父は既に消え去り、不在の義父が不在のままに、ミイラ化した母=嫁を鼓舞しつづけていたのだろう。崖の上にも下にも子供はいない。ミイラ化した「崖の上のリサ」と、孤独に逼塞する「崖の下の宗介」が生き残る道理だ。
 
 ポニョは、母たちの都合で嫁として囲い込まれ(父=フジモトは反対していた。舅=耕一はなんにも知らない)、一時は得た全世界を海へ沈め地球崩壊を呼び込む程の力をキレイに失った。そのまま、姑の策謀のままに泡と消えたに違いない。




追記:
年中無休で働く若者は年収500万、毎日趣味に生きる高齢者は年収600万円

知人Aの息子は、いわゆる有名大学を卒業し、いわゆる一流企業に就職しました。彼の息子は休日出勤も深夜残業も必死で頑張り、25歳で年収500万円に達しました。いまどき25歳で年収500万円なんてなかなかいません。超エリートといってもよいでしょう。
殊勝な息子は父にこう言いました。
「お父さん、僕は今年の年収は500万円を超えたよ!
これからはちょっとくらい仕送りしようかと思うんだけど・・・」なんて、親孝行な息子さんでしょうか!しかし、知人Aは息子の申し出を断ったそうです。理由は、「息子に迷惑をかけたくない」からではなく「息子の世話になるほど老いぼれていない」と頑なだからでもなく、ただ単に、大企業を勤め上げた知人Aの年収は、年金だけで息子の年収を上回っていたからです。その額は600万円ほどだそうです。年間600万円の年金収入に加えて、彼は、株やら投資信託やら預貯金やら不動産やら資産をたんまり抱えています。負債はもちろんなく、住宅ローンなんてとっくに払い終えました。彼が私に聞いてくることといえばいつも「どの株買ったらいい?」「この前証券会社で勧められたこの投信ってどうなの?」「ドルはいつ買ったらいい?」など、有り余る資産の運用の話ばかり。