オランダでビートルスにあう


寝ていたら、電話があった。
「オランダでビートルズに会えるけど、来ない?」。
行くことにした。
オランダ在住の音楽ライターの部屋。ワンルーム。キッチンテーブルがあってソファーがひとつ。床は絨毯敷きだが、ポテトチップの粉やら紙屑やらが散らばってひどく汚れている。紙袋に入ったキャンディーがたくさんある。数珠状に十個ちかくキャンディーが連なる形のキャンディー。玉のれんを一本づつにわけたようなかたち。僕の他にもうひとり女。日雇い派遣風の若い女。貧乏臭く薄汚れた服装。髪は短めで、何日も洗ってない様子で油じみてねちゃねちゃと固まっている。「・・・ええ・・・ああ・・・」とか間の空いた喋り方をする愛想のない若い女
ビートルズは時間になっても来ない。そんなもんなんだろ。
飴を舐めながら待つ。数珠繋がりになっているので舐めにくい。横にしてハーモニカを吹くようにして、しゃぶる。
結局、1時間近く遅れてやって来た。ワァーワァー騒ぎながら。
どれが誰なんだかまるでわからない。ヒッピーの格好した長髪髭面のじいさんが五人と若いマネージャー。人数あってないのが気になる。あのひとりは、ポール・マッカートニーか? ポールって生きてるんだっけ? あとの四人誰だ?
インタビューがはじまるでもなく、ライターとマネージャーでスケジュール表を前に打ち合わせが始まった。
珍しいものだろうと思って、ケータイで写真を撮った。
子どもがいる。キャンディーをやる。
「どれが好き?」
「瓠&%~漓^`+*﹅♨≠□≠◇△・・・・」とわかんない答え。でも熱心に舐めてる。
打ち合わせが終わったらしい。ビートルズといっしょに来ていたyacciが、女に話しかけてる。
アムステルダムで、今の時間、中華食べれる店、知らないですか? 点心がたくさんあるようなところ」
「あ・・・どんなお店がいいですか?・・・・」
「とりあえず、連中、たくさん食べます」
「え・・と・・・・去年の・・・前の日に行ったのは、・・・餃子があったんですけど・・でも今の時間やってるかわからないし・・・・もうその店ないかもしれないですよね・・・じゃあ、あ、そうか・・・え、と・・・・・」と、よくわからない返事。
部屋が汚いので、掃除する。ポテトチップスの粉を集め、溶けて絨毯にからみついたキャンディーを拾い・・・・