後期ヴィクトリア朝時代のセクハラ

「(・・・・・・・)
 そこへ、ミス・グレース・ダンバーが現れた。わたしたちの出した求人広告に応じてやってきた彼女が、二人の子の家庭教師になった。新聞で写真をご覧になったのではないかな。あの人もたいへんな美人だと、みんなが口をそろえて言う。さて、そこいらの人間より品行方正ぶるつもりもないから、認めよう。そういう美しい女性とひとつ屋根の下に暮らし、毎日のように顔を合わせていながら、熱い思いをいだかずにいられるのもか。わたしを責めようというのかね、ホームズさん?」
「熱い思いを責めはしませんよ。だが、その思いを口に出されたなら、それは責められてしかるべきでしょう。その若い女性にとって、ある意味であなたは保護者なんですからね」

(「シャーロック・ホームズの事件簿/ソア橋の難問」 ISBN:4334761828 より)