閃光の先に


閃光の先に浮かび上がるもの。
写真が写真的なものとして忌み嫌われ切っていた時代の写真技法である閃光写真。
スタジオ照明の職人技やら自然光に忠実なネイチャーフォトやらではなく、嫌われ者の糞蠅にも喩えられたパパラッチの時代のスキャンダルフォトととも知られた写真技法である閃光写真。
闇に紛れて密やかに取り交わされる微細な襞を蓄えた愛人関係にがさつに容赦なく踏み込むために応用された写真技法。
その厚かましさは、どこまでもその本性を持ち続ける。
どこまでも生まれの卑しさは、下卑て歪んだ性根とともに生き続ける。
下卑た性根は、表象を放っておかない。
「表象? なにそれ? そんなもんあるの? でもあんたの顔の上にはなんかついてるよ」とづけづけと言い募る。
そう、閃光の先には、「化粧」が「化粧」として写ってしまう。
表皮に厚塗りされながら、視覚上はほぼ認識されず、太陽光のもとで、室内照明の下で、ないものとされ、ないこととされ、皮膚の一部であるとされ、身体特徴と同一視されていた「化粧」が、皮膚やら身体やらとは別のものとしてはっきり写る。
視覚には映らないが、写真には写り込むもの。
視覚には認識されるが、写真は無視するもの。


✄ฺ------------------- 
映像の世紀の後」ということを肌身に染みて感じながらカメラに振り回される時、写真は特別なんだと思いたくなる。
「表象」能力としては、映像を持たないweb掲示板の噂話の方が有利だろう。
証拠写真より複数証言の方が重宝される。
となると、写真に残された分野は、「表象すること」ではなく、「表象を作っている装置」を表象すること?
「痕跡を記録してるだけなんだがね」と不遜なニヤニヤ笑いを顔に漂わせながら、「あんたのイメージなんてのはただの塗り物にすぎないんだよ!」と決めつける。のちのちの都合のために。
物自体なぞ写る訳もないのに、「俺の出自は、指標記号なんだ」とウソっぱちの出生記録をでっちあげつつ、「だから、ここに写ってるこれが真実なんだよ!」とウソを重ねて、「だからよお、隠して欲しけりゃ、それなりにしてくんねえか? こっちもこういうことでやってんだから。な?」と恫喝まじりに寄付を呼びかける。



✄ฺ------------------- 
やはり忌み嫌われた出自の蔑まれた生まれのメディアなのだから、その本性には忠実でありたいものだ。