PAUL CELAN - PSALM

  PSALM
   

 Niemand knetet uns wieder aus Erde und Lehm,
 niemand bespricht unsern Staub.
 Niemand.

 
 Gelobt seist du,Niemand.
 Dir zulieb wollen
 wir bluehn.
 Dir
 entgegen.

 
 Ein Nichts
 waren wir,sind wir,werden
 wir bleiben,bluehend :
 die Nichts-,die
 Niemandsrose.


 Mit
 dem Griffel seelenhell,
 dem Staubfaden himmelswuest,
 der Krone rot
 vom Purpurwort,das wir sangen
 ueber,o ueber
 dem Dorn.

PAUL CELAN "DIE GEDICHTE" ISBN:3518456652



詩篇


誰もぼくたちを再び土と粘土から捏ねない、
誰もぼくたちの塵に言葉を吹き込まない。
誰も。


お前が讃えられるように、誰でもない者よ。
お前のために
ぼくたちは花咲こう。
お前に
向かって。


ひとつの無
だった ぼくたちは、である、でありつづける
だろう、咲き誇りながら――
あの無の-、あの
誰でもない者の薔薇。


そこには
魂の明るさの花柱が、
天のように荒れ果てた花糸が、
花冠は
深紅の語によって赤く、それをぼくたちは歌ったのだ
うえで、おお
茨のうえで。

中村朝子訳「パウル・ツェラン全詩集〈1〉」ISBN:4791790812



頌歌


誰でもないものがぼくらをふたたび土と粘土からこねあげる、
誰でもないものがぼくらの塵にまじないをかける。
誰でもないものが。


たたえられてあれ、誰でもないものよ。
あなたのために
ぼくらは花咲こうとおもう。
あなたに
むけて。


ひとつの無で
ぼくらはあった、ぼくらはある、ぼくらは
ありつづけるだろう、花咲きながら―――
無の、誰でもないものの
薔薇。


魂のあかるみを帯びた
花柱、
天の荒漠さを帯びた花粉、
棘のうえで、
おおそのうえでぼくらが歌った深紅のことばのために赤い
花冠。

飯吉光夫訳「死のフーガ」ASIN:B000J950A2


Psalm - Paul Celan