果物ナイフ一丁で捨て身の暴挙


「損はしたくない」「得にならない」「上手くやらなくちゃ」。
リーズナブルでごもっともな心がけだ。
創意工夫だけでなにがどうなるものでもないのだが、果物ナイフ一丁で捨て身の暴挙に出るなんてそうそうできるものでもないのだろう。
近代美術から杉田真珠的な暴挙を差し引いたものが、ポスト・モダンと謳われたリーズナブルな商行為だったのかもしれない。
新自由主義時代の余り金を巡って狂奔した商行為が一巡した以上、その間忘れ去られていた暴挙が浮き上がってくるのも必然。
そんな時期なのだろう。
解決されないままに単に忘却されていた近代的暴挙。
20世紀的暴挙。
古き良きプレ金融危機新自由主義時代のバブル銭を懐かしみつつ、暴挙抜きで美術を成立させようとするなら、前近代の花鳥風月まで後退して様式美に徹するのが得策か?
いや、花鳥風月もまた血腥い獰猛な世界なのだ。
とすれば、血の臭いを忘れた美術なぞ、使い途のない=出来の悪い工芸品に過ぎなかったと換言出来よう。