長崎市長銃撃事件とハードボイルドもの





mixiから)

長崎市長銃撃。
なにやら懐かしい。
本島元長崎市長、ご存命なんだ。


本島襲撃は、義憤に駆られた中年右翼だったけど、今回は、初老の暴力団員。なんか切実なものを感じて、暴力団員に肩入れしている、悪いが。


90年第1回長崎市長銃撃のスジの通らないイデオロギーに頭がいかれ、時節的俗情に後押しされてはねあがった構成員のカッコウつけとは、訳が違う。


「59歳が鉄砲玉で行かなきゃならない」っていう事情。
老齢男性自殺者たちの事情とかぶる。
うちのめされて名もなく自死するよりは、と、選択された自暴自棄な確信的暴力。
なかったんだよ、きっと。
それしか。


その辺の事情の差が、結果に出たのか?
「90年の銃撃は、失敗。2007年の銃撃は、成功」。
半端なイデオロギーによる後押しより、生活がかかった職業的ゴロツキの意地の方が強烈だってことだろう。若しくは、国家主義イデオロギーより資本主義的切迫の方が強かったという結果か。今のニッポンで、「国家vs資本」の闘いがあったら、「資本が勝つ」っていう徴候かもしれない。


追いつめられてんだろうなあ、指定暴力団。つい先頃、「警察権力強化、暴力団徹底取締」を方針とする石原都政継続が決まった地域に住んでいるので、なんかぞぞっと来る。渡りに舟で、警察強化が進む筈。追いつめられて後のないベテラン侠客が自滅的暴力に出る。
やなストーリーだよなあ。


となると相手は、「石原慎太郎」だから、別にいいやって話もあるけど、その後に来る警察国家体制の強化は、やっぱりごめんだよね。
もっとも、「石原知事銃撃」がなくても、「警察国家体制強化」は継続されることは決定的な訳だが。


劇画とかハードボイルド小説のカッコウのねただと思うが。関川夏央谷口ジロー事件屋稼業ISBN:4575934356 のシリーズで読みたい。若しくは、矢作俊彦「さまよう薔薇のように」ISBN:4041616085 の続編か?
老年に達した「探偵」「侠客」「悪徳警官」たちの物語。非正規雇用でかろうじて凌ぐ「探偵」、食い詰めて切羽詰まった「侠客」、天下りして意味なく羽振りの良い「悪徳警官」。舞台は、薄っぺらにレジャーランド化が完成した横浜。


一回目の長崎市長銃撃事件があった頃もチャンドラーやらハードボイルド小説をやたらと読んでいた。今回もまたチャンドラーを続けざまに読んでいるところだった。偶然の符合? いや、90年というのもなにをしようか皆目見当がつかない時期だった。だからこそチャンドラーなぞに入れ込んでいた。今回もそうだ。偶然ではない。そういう時期なのだ。個人的な事情は、社会的事情に規定される。サルトルの教え? いや、普通に考えてそうでしょ。「信じること」「あきらめないこと」を強調するのが、JーポップスやらTV番組やらのあれだが、ウソだ。社会的規定を忘れさすための”方便”だろう。「社会が悪い? 違う、おまえが悪いんだ、おまえだけが悪いんだ、社会のせいにするな」と言うための。あのさ、ショーペンハウエルじゃないんだから、意志と表象でなんとかなる訳がない。「自殺者数年3万数千人」という数字を思い浮かべただけで、ウソと分かる。「3万数千人」づつ、生きていてはいけない落第者が毎年でているとしたら、及第基準がおかしいのだ。「社会」を計算に入れない方が諦めやすいから、そんな風に宣伝されてるだけだ。その方が創価学会自己啓発セミナーや神秘系新宗教イデオロギーにもはまり易いし。”方便”っていうのは、「3万数千人」づつ(町一個分だ。毎年毎年町全員首括る町が一個づつあるってことだ)の自殺者を見ない振りするための”うそっぱち”を労することだろう。
たまのひとりが”方便”を無視して、自暴自棄な暴力に打って出た方がいいのだ。騙されて安穏とするよりは、犠牲や惨劇を伴ってでも、事実(社会ってもんの規定性が専横してるんだっていう事実!)に触れるべきなのだ。民主主義は綺麗事だけではない。血みどろに進行する。










90年の右翼による銃撃事件に関していえば、「天皇主義」の立脚点から言って、平成の御代にはあってはならない蛮行だった筈だ。平和と友好と個人意志を尊重する平成の”天皇陛下”がそんなものを望んだ訳はないのだから! 実行犯らの根拠は、寧ろ、「そんな昔のことをほじくり返したら、お年寄りの天皇さんが可哀想じゃない」という88年〜89年当時、昭和天皇危篤時蔓延した痴呆的俗情が根拠だったことになる。
それってだめでしょ?
天皇主義を掲げる構成員として。


調べたら、本島銃撃の田尻和美(現・若島和美)って、そのまま所属団体「正氣塾」設立者の養子になり、2002年に出所して、今でも似たような事件を起こしてる様子。
例えば、ナベツネに巨人オーナー降りろと脅迫かけたり、「ラジオ番組内で反日的発言があった」と爆笑問題太田光事務所の前で街宣カーでなんかがなったり(2ちゃんがネタ元だったらしいんだけどね。事実無根だったらしいんだけどね)、週刊誌に醜聞が出てた女弁護士相手に街宣して名誉毀損で訴えられたり・・・。
プロ野球に、週刊誌に、2ちゃんねるに、売れっ子TVタレント脅迫・・・。一貫して、俗っぽく下司に大衆路線。翻って、やはり本島銃撃も同じ理由だったってことだろう。「世論が言うから、のっかってみました」と。
今や、本島銃撃についても、「殺す気なかった」ってはっきり言ってるし。天誅じゃないだろ、それ。
情けない。
民族主義行動右翼を称するなら、せめて真面目にやってくれ。
http://www.nishinippon.co.jp/news/2005/sengo60/sengo7/04.html