生肉を喰うから・・・



エスキモーは、野菜を喰わない。生肉しか喰わないから、野菜を喰わなくて問題ないんだ。生肉にはビタミンが含まれているので、野菜なしでも健康でいられる。それから、生肉しか喰わないエスキモーは、糞をした後に紙を使わない。生肉しか喰わないから、彼らの糞は、コロコロしていて紙がいらないのだ」という記述を読んだ。
http://plaza.rakuten.co.jp/minadego/diary/200702160000/




エスキモー」って、イヌイットのことだよね? 21世紀の今日もイヌイットは、火を使わないの? そもそもほんとにイヌイットは、火を使わなかったの?
イヌイットと同"人種"であるニッポン人もある意味エスキモーだ。魚を生で喰う。ボイルした稲を団子状に丸め、その上に生魚を載っけて大豆の汁に浸して喰う。だからニッポン人は・・・・。ウソだ。

「野菜を喰わない」で思い出すのは、サッカーの中田だ。ほんとかどうか知らないが、「中田は肉しか喰わない」と報道されつづけている。しかし、中田が火を通した肉は喰わないという話は聴かない。火を通した肉だけを喰って、野菜も食べるニッポンの他の選手たちよりよく走り回っていた。ウム。

あと、「BRUTUS」で読んだ古い記事がどうしても忘れられない。
 玉村豊男と対談していた人の話だ。その人(朝鮮系の人だったと思う)は、一時期ラップ人と行動をともにしてトナカイの放牧をしていたそうだ。その時、食べるものは、「トナカイ」だけだったという。アラスカだけでなく、ラップランドも野菜の栽培はできない。毎日毎日トナカイばかり。もちろん生でなんぞ喰わない。玉村が「飽きないですか?」と問うと、「飽きないです。部位によって全部味が違うから全然飽きないんです。寒いところなんで特に脂肪が美味いんです。脂肪を薄めにスライスして遠火で焼いて、半透明になったところにマーガリンを塗って喰うと、これが美味いんですよ!」とか語っていた。「やっぱり、ウンコはころころなんですか?」の問いかけにも、「いや、普通です。微量だけど肉にはビタミンも何も全部含まれているから、量食べれば同じなんですよ」とか答えていた。

今、「BURUTUS」のバックナンバーをひっくり返す元気はないんだけど、多分間違ってないと思う。いや、だって、イヌイットだって、今ならカップ麺も何も喰うだろうけど、相変わらずあの辺は野菜は採れない筈だし、大体、「火を使わない」「焼かない」って文化として原理的にあり得るのかね? レヴィ=ストロースに「焼いたものと生のもの」っていう論文があったような(これまた今原文を引用できないけど)。





付記:
で、見つかった。「ブルータス」の方。

[ 日本人は体が寒い。] 鄭仁和&玉村豊男

玉村 ラップランドではほとんど肉ばっかり食ってる?
鄭 全部肉です。野菜みたいなものはぜんぜん食べません。それでお通じというのはちゃんとあるんですよね。
玉村 コロコロしてる?
鄭 まったく普通ですよ。
玉村 鄭さんの普通ってどういうのかな?(笑)
鄭 要するに水の中に落とせば、沈みもせず・・・。
玉村 中空に漂う。
鄭 ええ、中空に漂うというのが、一番比重的に正しい。沈みもせず、浮きもせず、ぷかりぷかりがいいんじゃないですか。(笑)
 で、肉ばかり食べても体の変調というものはぜんぜんきたしませんね。肉というのは一種の完全食品に近いものだと思うんです。ビタミンC以外のものは、微量ながらみんな入ってる。それで朝300〜400グラム、夕方で1キロ近くは食うわけですよ。微量でも多量に食えば何とか間にあうというところですね。

鄭 脂肪分ていうのは、寒いところでは大変おいしく感じるんですね。ラップランドでも、連中の好物は何かっていうと、脂身の燻製肉がありますね。それを火にかざして焼いて、火が通ると透明になるんですよ。それにマーガリンを塗りたくって齧ると寒さを感じないですね。

鄭 そう。じゃあ、トナカイだけ食べてて飽きないのかといいますとね、各部位で肉の味が違うわけですよね。つまり筋肉質のところはなんとなく繊維状になってて、ねばねばしてる。これはこれで特有の味がある。燻製肉は燻製肉で味があるというような具合で、それぞれの味の違いは分かりますね。

(「BRUTUS」77号 1983 11|15 マガジンハウス)