「2012年9月15日」に書いたもの。読み返してみたら、面白いんで、再掲。
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昨日からTwitterで書いてるトマス・ピンチョン→ウォーカー・エヴァンス+ロバート・フランク→カラー写真→ロックンロールの話が面白いんだが、まとめようとすると、どこから書き始めていいのかわからない。
Twitterで書き始めると、バラバラのままでまとまらなくなるよな。
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1955年を舞台にしたトマス・ピンチョン「V」が、アメリカ東海岸のロードを行ったり来たり、ヨーヨーイングに終始しながら、人生を送っているベニー・プロフェインを主人公にしている。
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ピンチョンの小説は、むせ返るような安っぽい色彩に満ちあふれている。
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「アメリカのロードの写真」と言えば、ウォーカー・エヴァンスとロバート・フランク。ふたりの写真は、頑にモノクロだけど、実際には、ピンチョン的な色彩が満ちた場所だった筈。例えば、ロバート・フランク「アメリカ人」に頻出する星条旗、写真では落ち着いたモノトーンの訳だが、実際には赤白のストライプに青地に白星のけばけばしい色彩。農民たちが着てる服にしろ、ブルージーンだったりタンガリーシャツだったり、黒く見える車は真っ赤っかだろうし等々。
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ロバート・フランク「アメリカ人」は1955年の撮影。ピンチョン「V」で、ベニーがうろついてるのと同時期の記録。
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ウォーカー・エヴァンスがカラー写真について語っている文章。
“Many photographers are apt to confuse color with noise and to congratulate themselves when they have almost blown you down with screeching hues alone – a bebop of electric blues, furious reds, and poison greens.”
Walker Evans, Fortune magazine, July 1954 issue, page 77.
https://ginagenis.wordpress.com/2011/04/21/walker-evans-quote-about-color-photography/
このブログの人は、1954年のモノクロからカラー写真への変化を、21世紀のフィルムからデジタルへの変化になぞらえてる。まさにそんな感じだったのかもしれない。1954年に、ウォーカー・エヴァンスは、51歳。熟年に達した写真家が、近頃急に流行り始めたカラー写真やらエレキギターやらに眉をひそめてる感じ。
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1954年。この年に、アメリカでカラー写真に大きな変化があった。技術的な変化ではなく、法規制によって、複雑な課金システムが廃絶され、コダクロームが急激にひろがりはじめた。(英語がわかんなくてここんとこ自信がないが、なんか法規制があったことは確かだろう)
Because of its complex processing requirements, the film was sold process-paid in the United States until 1954 when a legal ruling prohibited this.
http://en.wikipedia.org/wiki/Kodachrome
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その結果、50年代には、「PLAYBOY」誌などは、既にカラーピンナップを多用している。
http://www.x-al.com/Playmates/index.html
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「Playmates」のカラー写真を思い浮かべると、51歳のウォーカー・エヴァンスがカラーを嫌がっていた理由もよくわかる。「私たちは『写真家』だ! エロカメラマンなんぞと一緒にされたらたまらん! なんだ、その仰々しい色彩は・・。エレキとか騒々しいノイズが音楽ではないように、毒々しいカラー写真なぞ写真とは認められん。そうは思わんかね、ロバート・フランクくん?」と、31歳のロバート・フランクに振って、まだ駆け出しの写真家だったロバート・フランクが「ですよねー!」と応じて作られたのが、「アメリカ人」
With the aid of his major artistic influence, the photographer Walker Evans, Frank secured a grant from the John Simon Guggenheim Memorial Foundation in 1955 to travel across the United States and photograph all strata of its society.
http://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Frank#The_Americans
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でも、1955年に18歳だったトマス・ピンチョンに映ったアメリカは、コダクローム的な安っぽい色彩に満ち、ノイズと喧噪に満ちた場所だったし、実際、そうだったのだろう。
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ロバート・フランクは、この「1954年」の変化をどうしても受け入れることができなかったのではなかろうか?
1973年、ローリングストーンズに密着して撮影された「Cocksucker Blues」 は、時代錯誤にモノクロで撮影されている上、「ロック」に対する嫌悪感に溢れていた。
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ミック・ジャガーは、ロバート・ジョンソンやハウリン・ウルフが大好きなアメリカかぶれのイギリス人で、ウォーカー・エヴァンスやロバート・フランクの旧いアメリカが好きで好きでたまらないんだけど、旧きアメリカの方では、ミック・ジャガーやミック・ジャガーに熱狂するような連中が大嫌い。
「PLAYBOY」の悲しき片思い。
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っていうような話。
割りと気に入っている。
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